今日から不良王子と同居します。
彼は真剣な様子でこちらを見つめている。


どうしたのかな?


手を握られるだけで、身体中電気が走るくらいときめいてしまう。


「音葉さん、俺もうこのまま自分の家に戻ろうと思うんだ。だから今夜一緒には帰れない」


「え?そんな……」


突然の予期しない彼の言葉。


玲生くんは神崎家へこのまま戻ってしまうの?


お兄さんとの問題が解決したから?


だからってそんなの急すぎるよ。


頭が真っ白になって自分勝手なわがままを言ってしまいそうだった。


だけど一生懸命がまんした。


彼が神崎家へ戻ると言ってるんだから本当なら彼のために喜んであげなきゃいけない。


ご家族だって安心するに違いないんだから。


それをただ、自分勝手に引き留めちゃいけない。


彼と離れたくない、ずっとうちにいて欲しい。なんて言えるわけない。


「そっか……」


「本当はこのままずっと音葉さんの家にいたいけど、それは出来ないから」

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