今日から不良王子と同居します。



「お嬢様。大丈夫ですか?お熱も下がってよかったです」


ばあやはニコニコしながら私の身体を熱いタオルで拭いてくれていた。


熱を出す前のことはあえて何も尋ねてきたりはしなかった。


それが、ばあやの優しい気づかいだってわかってる。


「あの、ばあや昨夜は誰かここへ来た?」


「ええ、お医者様が来てくれておりましたよ」


「そう……」


やっぱりあれは夢だったのか……。


そうだよね、彼がここへ来てくれるはずないよね。


本当に私に都合のいい夢だったんだな。


だけど、不思議とちょっとだけ気持ちは晴れやかになっていた。


また今日から頑張れるような気がした。


きっとたくさん泣いて、言いたいことを吐きだしたから。


ちゃんと現実を受け止めようって気持ちが強くなってきたんだ。


彼にお別れを言われたあの日の出来事が信じられなくて、往生際悪くもがいていたけれど、もういい加減あきらめなきゃいけない。


「あの、ばあや、この前はごめんなさい」

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