今日から不良王子と同居します。
明日香ちゃんはおびえたように彼に尋ねる。


「かの悪名高き豊之坂工業高校だよ。神崎玲生の通う高校。そうだよな?音葉」


「う、うんそうだけど。でもどうして?」


私も明日香ちゃんも車から降りないで、ぎゅっと手を繋ぎ合った。


かつての記憶がよみがえってきて正直怖かった。


明日香ちゃんだって、良家のお嬢様だもん。怖いに決まってる。


直政くんはどうして私達をここへ連れてきたんだろう。


だっておかしいよ、彼はいつだって私達を大切に想ってくれているはずなのに。


以前、私がここでどんなに怖い目にあったかって話したとき、彼はもう2度とこの学校へ来てはいけないって言って私のことをあんなに心配してくれたのに。


それなのに、彼自らこんな危険な場所へ連れてくるなんて。


「直政、帰ろうよ。あんたも早く車に乗って」


「どうして?大丈夫だよ。音葉と明日香のことは俺の命に代えても守るから」


さらりとそんなことを言った彼だけど、あいかわらずの無表情。


「何のためにここへ来たの?」
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