今日から不良王子と同居します。
だけど、まさかそれを正直に直政くんに言えるわけない。


「俺は、音葉さんに、なにもしてない……」


玲生くんは苦し気にそう言って、そっと私の方を見て目が合うと小さく頷いてみせた。


玲生くん?


もしかしたら、今のは何かの合図かもしれない。


「それが、気に入らなくてこんなとこまで来たのかよ。言いがかりだろ、俺はもう彼女に会ってない」


直政くんはフッと不敵に笑って玲生くんを見つめる。


「お前のことなんて初めて会った時から全部が気に入らなかったよ。その顔も瞳も、存在自体が全部」


「へぇ奇遇だな、俺だっておなじだ。音葉さんの婚約者だっていうあんたのことが初めから気に入らなかった」


皮肉めいたことを言いかえす玲生くん。


「だったら話は早いよな。こうしてわざわざおまえのフィールドに来てやったんだ。おまえのやり方で決着をつけてやるよ」


「喧嘩ってことかよ?だけどやめときなよ。直政さんの大切な幼なじみ2人がさっきから怯えてるじゃん」


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