今日から不良王子と同居します。
玲生くんは私のために自分が1人でおとりになるつもりなんだ。


そんなのダメ。


あんな怖い人たちのところへひとりで突っ込んで行ったら殺されちゃうよ、だってあの人たち武器みたいな木刀を持ってるんだから。


私は玲生くんを止めようと、もう一度制服のブレザーに手を伸ばした。


だけど、彼は勢いよく走り出したので、それはもう少しのところで叶わなかった。


「やめて、玲生くん」


「お嬢様、早く」


蒼汰くんが車が待っている方へ私を引っ張っていく。


私を両サイドから囲むように玲生くんの他の友人たちも一緒に走ってくれた。


だけど足がもつれてうまく走れない。


「待って、玲生くんが」


後ろがどうしても気になって振り返った。


ウオッーという歓声が地響きのようにあがる。


取り囲んでいる大勢の生徒達は野次馬のよう。


まるで古代ローマのコロッセオの闘いの見物客みたいに大興奮している。誰一人喧嘩を止めるものなどいない。


玲生くんの背中はどんどん遠のいていき、そして彼は相手のリーダー格の大男めがけて高くジャンプした。


「お嬢様、見ないほうがいい」


そう言って蒼汰くんが突然私の目の前を手で覆った。

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