今日から不良王子と同居します。
そう言いながら、彼は私の手をそっと握ってきた。


そして先ほどまでの真剣な口調とは打って変わって、甘えるような声になる。


「そんなことよりさー、言いつけ通りにちゃんと課題を終わらせたんだから、なにかご褒美が欲しいな」


「ご褒美って……。課題は自分自身のためにやるものでしょ」


「固いこと言うなよ」


フッと笑って私のウエーブのかかった長い髪に触れる彼。


いたずらっぽい視線でこっちを見てくるので、緊張してしまう。


「退屈を紛らわしてよ、音葉さん」


「退屈って」


「邸にばかり閉じこもってなんの楽しみもないんじゃ、俺、頭がおかしくなりそうだよ。ちょっとは発散させてくれない?」


彼に言われてみて、それもそうかもしれないなって思った。


停学中だからって、家の中から一歩も出るなって言われたら彼のように元気な人からしたら苦痛なのかも。


「発散?そうかそうだよね。確かに邸の中にこもってばかりじゃ息苦しくもなっちゃうよね」


「そうそう、俺まだ16歳だしね。こーんな綺麗なお姉さまと部屋で二人っきりって正直、たまらないんだよな」


「ごめんなさい。私あまりおしゃべりとかも得意じゃないしつまらないわよね」

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