今日から不良王子と同居します。
だけど、ばあやからしてみたらほんとは私と彼がこんなふうに親しく関わることもあまりよく思っていないんだ。


それにしても、彼がこんなに不機嫌になってしまうなんて。


直政くんの名前なんて出したのはちょっと失敗だったかもしれないな。


もしかしたら、ヤキモチ妬いてるのかな。


そう思って彼の横顔を見たら何だかドキドキしてきて。


温水プールの生ぬるい水を手ですくいながら、無意識にこんなことを呟いてしまっていた。


「私だって玲生くんとふたりでプールはいりたかった」


「玲生くんといると楽しいから、もっと……」


やだ、なに言ってるの私。


もっとってなに?


彼の方を見れなくて俯いた。


聞こえていませんようにってそっと願った。


だけど、また口をついて出てきてしまいそうになる言葉を必死で呑み込んだ。


両手で口をふさぎ、瞳をぎゅうって閉じた。顔が熱い。


音葉、言っちゃダメ、これ以上、しゃべっちゃダメ。


私どうしちゃったの?こんなの変だよ。


何かとんでもないことが口をついてでてきてしまいそうで怖い。


ピシャッ


「え?」


その時、プールに入っていた玲生くんが私に水をかけてきた。


「あっ、もうっ」

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