今日から不良王子と同居します。
「音葉さん、大丈夫か?」
バタバタ腕を動かしてもがいていた私のところへ玲生くんがすぐに泳いできてくれた。
「落ち着いて音葉さん」
ゴボゴボ、水が口に入ってきて苦しい。
「助けて」
近寄ってきてくれた彼に必死でしがみついた。
パニック寸前だったから、彼が一瞬痛そうに顔をしかめたことにすぐには気が付かなかった。
「大丈夫だよ、落ち着いて」
溺れる者は藁をもつかむっていうけれど、この時の私は本当に必死だったから彼の肩に爪を立ててひっかいてしまったんだ。
でもすぐには気が付かなくて、なおも痛い思いをさせてしまった。
「音葉さん」
彼が私の腰に腕を回して自分の肩に担ぎ上げるくらいに高く持ち上げてくれて、ようやく息が整えられた。
ハアハアハア……。
しばらく、抱き合うような体勢でじっとしていたらようやく落ち着いてきた。
あ、どうしよう、この体勢はかなり密着度が高くて。
彼の逞しい身体が濡れたTシャツ越しに感じられて心臓がドキドキした。