俺の宝物は、お前の笑顔。
「あっ」
スマホの画面を見て、愛菜が眉を下げて声を出した。
「愛菜、どうしたの?」
「ごめんね、妹が熱を出して倒れたみたい……。ママも、今は手が離せないから看病しなきゃいけないんだって」
「えっ!」
瑠夏ちゃん、大丈夫かなぁ……。
いきなり熱が出て、しかも倒れちゃうほどだなんてつらいだろうなぁ……。
「というわけだから、わたしも帰る。ごめんね、2人とも。ちょっとだけの時間しか過ごせなかったけど、楽しかったよ」
愛菜は、そう言って小走りで帰った。
「瑠夏ちゃん、お大事にね」
あたしが声をかけると、愛菜は足を止めないで振り返りながら手を振っていった。
「……帰んないの?」
あたしと2人っきりじゃ、てっきり嫌がると思った高畑くんは、なぜかいつまで経っても全く足を動かそうとしなかった。
「……あの時のこと、もう忘れたのかよ」
「ん?」
「いや、『ん?』じゃなくて。1人でいた時に、変な奴に絡まれてたじゃん。……あんなことあったのに、よく平然と1人で帰ろうと思うな」
「あぁ……」
そういえば、そんなことあったな。
心配してくれているみたいで嬉しいけど……なんでそんな小さい声でボソボソ言っているんだろう。
あたしには、さっぱり分からなかった。