俺の宝物は、お前の笑顔。

メイクをしたまま、あたし達はクレープを食べに行くことになった。



「もうすぐ冬休みだし、もうちょっと後から頼めばよかったかもねえ」



ちょっと残念そうに眉を下げた、袖川さん。



「クリスマスのスペシャルメニューとかあるもんねー」



これとか美味しそう、と言いながら愛菜はクレープの画像を見ている。

あたしも見てみると、クリスマスバージョンのスペシャルメニューは、『12月の20日から29日まで』と書かれてあり、まだ13日ということで、売られていなかった。



「まあいいや! 結局クレープ美味しいからね!」



あたしはキャラメルとバナナ、愛菜はリンゴソースとバニラアイス、袖川さんはレアチーズケーキとブルーベリーソースのクレープをそれぞれ注文した。



「健二も好きなやつ……って、星野さん知ってた?」



唐突にまた、袖川さんは高畑くんの名前を出してきた。


……もちろん知っている。そう言いたいところだけど、そこはぐっと我慢した。言ったら、「健二のこと思い出すから、もしかしてそれ選んだの!?」なんてからかわれそうだから。



「いや、知らなかった」



「えっ? ゆりあ、見なかったっけ? 高畑くん、そういうクレープ頼んで食べてた時あったじゃん」



……しまった。
愛菜がいるんだった。しかも、あの時は愛菜も一緒だった。



「なーんだ。全く〜、どうしてとぼけちゃうのよ〜」



袖川さんは、せっかくのテカテカになった唇がブルーベリーソースだらけになっている。


……彼のことを思い出すと、甘い味をなぜだか感じにくくなる。




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