俺の宝物は、お前の笑顔。
夜ご飯を食べ終えて、お会計をしてあたし達は外へ出た。
紺色の空から、粉雪がふわりふわりと落ちてきている。
「じゃあ、わたし、ちょっと急ぐね。家から連絡きちゃったから」
「うっわ、さみぃ。もう走って帰るわ、俺も」
愛菜と宗馬は、2人とも小走りで帰った。
「じゃあ、おやすみー!」
あたしは、2人に大きく手を振った。
「本当にお前ってうるさいよな」
後ろから、高畑くんの声がする。
「う、うん」
……まあ、頭に来る言葉ではあったけどまだお店からそう離れてないし、ちょっと離れた家の人にも聞こえちゃってたかもしれない。
そうやって考えると、ちょっと迷惑だよね。
「一緒にいるだけで、疲れそう」
「ごめんなさい……。もう大声あげないよ」
「羨ましい」
「へ?」
「お前が羨ましいんだよ」
「……どういうこと?」
「やっぱ、なんでもねえわ。雪降ってて寒いし、ひどくなる前に帰るから、お前もそうしろ」
高畑くんは、そう言って背を向けて帰っていった。
あたしは黙って、彼の背中に手を振ることしかできなかった。