俺の宝物は、お前の笑顔。
「健二、そこにいたの?」
母親が、俺の姿を見つけて声をかけてきた。
どうやら俺の家族も、みくじを結び終えたみたいだ。
親父も兄貴も、もう手にみくじを持っていない。
しかも星野と話してるところも見られたっぽいな。
母親が、星野の後ろ姿をじっと見ている。
「あの子は? さっきまで、健二と話してた子よね? 知ってる子なの?」
「同じクラスの女子だよ」
俺は立ち上がり、コートのしわを直しながらそう答えた。
星野を見ていると、自分とそっくりな母親とニコニコしながら楽しそうに話して歩いている。
「なんだ、お前。惚れ込んだか?」
俺まで星野を見ていると、兄貴が脇腹を自分の腰で小突きながら、冷やかしてきた。
「うるっせーなー。別にそんなんじゃねーし」
自分にも彼女がいないくせに、しかもいい年してよく言うよ。
「ハハハ。健二が女の子に接近するとは、新年早々珍しいことが起きたなぁ」
「だから、そんなんじゃねーんだっつーの」
親父もか。
なんで兄貴と親父が一斉に、冷やかしてくんだよ。
訳わかんねー。