俺の宝物は、お前の笑顔。
「宗馬くん、どうかしたの?」
少し離れた場所で、久保田が冬の風に黒髪をなびかせながら叫んでいる。
「さっさと行けよ、彼女呼んでるぞ」
1秒でも速くデートとやらにでも行ってくれ。
「分かってるって。じゃ、頑張れよ。そのために言ったわけでもあるんだからよ!」
ポン、と俺の肩を叩いて言う宗馬。
そのためって……。
俺は、誰かに何か言う予定があるだなんて全く思っていないのに。
ってか、俺の気持ちにはいつから気づいていたんだ?
こえーよ、こいつは。
唖然とした俺をよそに、宗馬はスタスタと走り出していく。
「わりぃな、愛菜。じゃ、行くか」
宗馬は久保田の方へと走って、彼女の手をそっと握った後に2人で冬の道を歩いて行った。
くそっ、リア充アピールをしやがって。
「高畑くん?」
ゆっくりと足を動かしながら近づいてくる星野は、その長いまつ毛で縁取られた、大きな茶色い瞳をパチパチとさせていた。