俺の宝物は、お前の笑顔。
「お前の笑顔かな」
「……え?」
お前の笑顔?
笑顔?
あたしの、笑顔?
「うん! 俺の宝物は、お前の笑顔。それ以外の宝物はいらねぇ」
あまりにもストレートに言われて、思わずあたしは俯き加減で頬をぷにぷにと触った。
「よし、最後に観覧車乗るか」
健二はそう言った後、あたしの返事を待たずして向かった。
全く、ずるいなあ。
あんなことを言ったのに、もう切り替えるだなんて。
あたしがあんなことを言われた直後に、「うん、行くー!」なんて言いながら、いつもの調子でいられるわけないじゃない。
「ゆりあ! 何、突っ立ってんだよ。そんなとこに立ったまま、閉園時間になっても知らねーぞ」
観覧車に乗る予定の人たちの後ろで、健二が叫んでいる。
……もう、本当にあたしの気持ちを考えようともしないんだから。
「待ってよー、健二ー!」
あたしは、小走りで彼を追いかけた。