俺の宝物は、お前の笑顔。
「おい星野ー、これお前の?」
リレーが終わり、お弁当の時間になったばかりに、高畑くんがあたしに話しかけてきた。
高畑くんの手に握られた、黄色い小花模様のハンカチ。
間違いなく、あたしのだった。
全く、どこで落としたんだろう。
「うん、あたしの。ありがと」
あたしがそう言って受け取ると、彼はあたしのことをまじまじと見てきた。
「ん? 何?」
「星野、髪結んでたんだ?」
「え? 今ごろ気づいたの?」
「別に?」
「いや、そう言われても……」
別に、の一言じゃ会話を続けにくいんですけど。
「急にどうしたんだよ?」
「え、今日は体育祭でいっぱい動くじゃない。いつもの感じでいたら髪の毛がバサバサするもん。周り見たら、普段髪下ろしてて、今日は結んでる子わんさかいるよ? 愛菜だって今日はポニーテールだし」
「うん。でもそういうのしてるの、星野ぐらいじゃね?」
「あたし?」
あっ、そういえばみんなポニーテールだったり、ツインテールにしたりしてるけど、三つ編みで一つ結びにしている子はほとんどいない。
「でも、それがどうかしたの?」
「いや、なんつーか……。あんま見ねーなって」
高畑くんは急にあたしから目を逸らして、頭を掻いている。
……なぜか、顔も少し赤いけど、気のせいかな?
……そっか、さっき走ったからそれかもしれない。
「ゆりあー! お弁当一緒に食べよ!」
高畑くんの言葉にかぶさるように、愛菜の大声が聞こえた。