俺の宝物は、お前の笑顔。
「高畑くーん!」
「すごくかっこよかった! 速かったよ!」
うちのクラスの女子たちが、まるで袖川を邪魔するつもりのように入ってくる。
っていうか、こいつらは袖川の姿が見えてるんだろうか?
絶対見えてねえよな。
だってこういう奴らって、自分さえ思い通りになれば後はなんでもいいっていう奴だろ? マジでタチが悪い。
「お、おう……」
「次の出番の時も応援してるからね!」
「頑張ってね!」
言われなくても頑張るけどな。
「次のも絶対高畑くんが1番かっこいいよね」
「あったりまえじゃん」
好きでもない奴に、かっこいいと言われても困るだけ。
女子の黒山の人だかりができて、いつの間にか袖川の姿も見えなくなっている。
……女子たち、香水つけてるな。匂いですぐ分かった。
結構きつい匂いがする香水と、汗の匂いが混ざって、割とここにとどまっているのはつらい。
「はやく弁当食べに行けー、時間なくなるぞー!」
教師の声が聞こえて、黒山の人だかりはあっという間に小さくなっていった。