俺の宝物は、お前の笑顔。
正直、イラッとした。
すみませんね、あたしがうるさい奴で!
宗馬は高畑くんの隣に座り、2人も勉強を始めたみたい。
「ねえそういえばゆりあさ、夏祭りってどうするの?」
「えっ!?」
あたしは、思わず面食らってしまった。
さっきまで真剣にあたしに勉強を教えてくれたのに、いきなり夏祭りの話をするだなんて。
「いや、もうすぐ夏祭りあるし、行くよね?」
愛菜はきっと勉強に疲れたと思って、一度話題を変えてくれたんだろう。
「うん、行く予定だけど」
「浴衣はどうするの?」
「あぁ……あれはもう着れないって、ママが捨てちゃったからなぁ」
あれ、というのはあたしが去年まで着ていた浴衣。
桜の花模様がすごく女の子らしい浴衣で、気に入っていたんだけど中学1年生の頃に買ったもので去年着てみたら丈が少し短くなってしまっていたのだ。
だから去年が最後ということで、今はもう自分の浴衣がない。
「愛菜はー?」
「わたしもね、小さくなったからママに無理だって言われたんだ」
「じゃ、買おうよ!」
あたしがそう言って立ち上がった瞬間に、ガタン、という音を立てて椅子が落ちた。
あっ、まずい。