俺の宝物は、お前の笑顔。
「おばあちゃん」
お姉さんは、おばあさんを呼んできてくれた。
お姉さんの事情を聞いたおばあさんは、あたし達の着付けを手伝ってくれた。
あたしはお姉さん、愛菜はおばあさんに試着室で浴衣の着付けをしてもらった。
「わぁ愛菜、キレイだよ!」
おばあさんと一緒に出てきた愛菜に対して、あたしは思わず声を上げた。
愛菜の透き通るような白い肌には、品のある紫のあじさいがよく似合う。
「ありがとう! ゆりあも可愛いーっ!」
「おふたりとも、とってもお似合いですよ」
おばあさんがあたし達に、ほろほろっと笑いながらそう言ってくれた。
あっ、さっきのお姉さんと笑い方が似ている。
お姉さんもこの人のこと、『おばあちゃん』って呼んでいたし。
やっぱり、お姉さんはこのおばあさんのお孫さんなんだなぁ。
「せっかくだし、これにしちゃう?」
「……うん!」
愛菜が、あたしの言葉に頷いた瞬間だった。
「高畑くん……」
店の窓に、高畑くんが歩いているのが見えた。
げげっ。
なんでここにいるのよっ!
思わず、あたしは試着室のカーテンをサッと閉めて隠れてしまった。
「え、どうしたの!?」
愛菜も咄嗟に聞いたけれど、すぐに気がついたみたい。
「そんな恥ずかしがらなくていいじゃん、わたし達が話しかけなかったら、別に高畑くん何もしないって!」
恥ずかしがらなくていい、なんて。
まるでこれじゃあ、好きな人にはサプライズで当日まで浴衣を見せない人みたいじゃん!
案の定そう思われてしまったらしいあたしは、店員さんに「青春ですねえ」と笑われてしまった。