俺の宝物は、お前の笑顔。

「で、2人はどこ行くんだよ」



高原くんは感情のない声で、あたし達にそう話しかけながら屋台をぐるっと見回している。


どうも高畑くんは、袖川さんの存在に全く気づいていないみたい。


袖川さんはというと、りんご飴を食べ終えて割り箸を捨てているところだった。


その後、ヨーヨー釣りの方に並びに行ってしまっている。



「なあ星野、お前さっきからどこ見てんの?」



高畑くんは、あたしが袖川さんのことを見続けていることに不自然に思ったらしい。


……それとも、あそこにいるのが袖川さんって気づいてないのかな?

確かに浴衣着ているし、髪型もいつもと違うから雰囲気は違うけど、それはあたしも愛菜も一緒だしなぁ……。



「ううん、なんでもない」



あんまり、じろじろ見ていたら失礼だよね。

袖川さんから目を逸らして、あたしも、屋台を見回してみる。
かき氷、フランクフルト、たこ焼き……。


どれも美味しそうだなぁー。



「かき氷の屋台あるよ。夏祭りでは鉄板じゃない?」



思わず、あたしはかき氷の屋台を指さしてみんなにそう言った。



「まあ、それは一理あるっちゃあるな」



はっきりとしない答えを言う高畑くん。



「確かに定番だよね。並ぼう」



愛菜も、かき氷の屋台の方へ向かう。


あっさりと決まったけど、いいのかな……?


まあ、いいか。2人とも反対してないみたいだし。




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