シークレットガール
「第12章」
昨日、星野くんから聞かされた、「茉乃ちゃんが私を殺そうとしてる」という、信じ難い情報に私は戸惑っていた。私の知っている茉乃ちゃんは、そんなことはしないはずだ。
身近な人を殺すほど、薄情な人ではなかったはずだ。でも、あのテープレコーダーの中の音声は、確かにそのような内容が記録されていた。
本当にそうだった? その情報は本当で、茉乃ちゃんは私を殺そうとしてた?
ありえない。そんなこと、あるはずがない。そう、茉乃ちゃんのことは私がよく知っている。
こんなの考えなくてもわかるんだ。これはデタラメだ。早くこれを茉乃ちゃんに伝えなくちゃ。
私は恐る恐る茉乃ちゃんに電話をかけた。スマホを握っている私の右手は冷や汗が流れている。あれが、茉乃ちゃんが私を殺そうとしてるってのが本当だったらどうしようって、不安になってきたせいで、冷や汗が出てしまう。考えないようにしよう。そう自分に言いかける。少し落ち着いたところで、茉乃ちゃんは電話に出た。
「もしもし? 私、加藤だよー。美波ちゃん、どうしたの?」
いつも通りだ。この感じ、とても落ち着くな。やっぱりあれはデタラメだったんだ。
「あのさ。あんたって私のこと、殺そうとしてる?」
「うん? そんなんけないじゃん! 身近な人を殺すほど、薄情な人じゃないよ! って誰がそんなこと言ってたの?」
あ、やっぱりそうだったんだ。でも、教えるべきかな。星野くんがそう言ったって、茉乃ちゃんに言うべきかな。うん、言うべきだ。茉乃ちゃんなら何とかしてくれるはず!
「星野くんがね。録音ファイルまで用意してさ。あんたが私のこと殺そうとしてるって言ってたの。まあ、私は信じなかったけどね。違ってよかった。」
「ふーん。そうなんだー。ありがとうね! 星野くんは私が何とかするから、任せてね!」
茉乃ちゃんはそっと笑った。とても落ち着くな。やっぱり私は、茉乃ちゃんが好きだ。もちろん友達として!
「うん! それじゃあまた学校で!」
「うん! バイバイ!」
茉乃ちゃんはそう言い、電話を切った。これでやっと安心できる。違ったってわかっただけで、私はもういいや。それでいいんだ。星野くんのことは茉乃ちゃんに任せて、私はもう考えないでおこう。
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