シークレットガール
「第5章」
「早速始めよっか。運命をかけたくじ引きを。」
「たかがくじ引きでそんなカッコつけんな。見苦しいぞ。」
私はカッコつけるつもりなどなかったのに彼は勝手に勘違いをしたようだ。元々マイペースなやつだったのであんまり気にしてはいないが、少しイラっとすることが殆どだ。
「それはともかくこれ、引いてみて。ルールは簡単。くじに任意の数字が書かれてあるけどその数字が相手より高ければ勝ち、低ければ相手の勝ち。あんたでもちゃんと理解できると思うわ。」
「おい、喧嘩売ってんのか? その言い方はやめろよな。」
「やめなーい。でもまあ、私もそんなに暇じゃないからここら辺でやめてあげる。じゃ私が先に引くね。」
少し緊張しちゃうなぁ。たかがくじなのに。やっぱり新しい要素が加わったせいかな? いつもとはちょっと違う感じがする。
私が引いた数字は「100」多分私の勝ちだろう。だって100までしか入れてないから。
彼は「53」を引いた。私は「これで私の勝ちだね。」と言いながら私の引いたくじを彼に見せた。自分の負けだと知って少し苛ついているのか小さい声で「ちぇっ、しょうがねぇな。」と言う。その声を私は確かに聞いた。
「なら決まりね! 私はね。秋元浩康くんかな。」
「秋元を? 何で?」
彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてはそう言った。もちろん口調もいつもとちょっと違っていた。なんかびっくりしている感じだった。そんなに驚くことなのかな? 別に秋元くんが不可侵領域ってわけでもないし。
「ただ子供の頃、私をいじめてたやつだったから。あの頃のか弱い私に酷い仕打ちをした張本人だし、この際にやっつけちゃうのも悪くないのかなって思ったの。まあ、今の私は秋元くんにやられっぱなしってわけではないし、円満な関係ではあるけれど、でもやっぱり憎らしいなぁ。」
思い出すとまたイライラしてしまったが、深呼吸をしてその感情を抑えようとする。
彼は聞く。「他のやつにしないか?」と。私は答える。「良いわけがないでしょう? 私が勝ったんだから私が殺したい奴を殺すわ。それが嫌ならあなたが死になさい。あなたが死んだら秋元くんは殺さないであげるから。」
彼はおどおどした声で「いや、もう良いや。殺してもいいぞ。」と言った。そんなに怖いのかな? 私、まだ何にもしてないのにな。まあ、私にはそんなのどうでもいいけどね。
「じゃあ次のターゲットを呼んでくれないかな?」
「何で俺が呼ぶんだよ!」
「だって私は秋元くんの番号知らないんだもん。」
当たり前じゃん。嫌いなやつの番号なんか一々覚える変わり者は多分ほとんどいないと思うんだよね。
彼は少し嫌がっているようだった。そんなに仲良かったっけ? 彼に興味 -もちろん監視対象としての-を持ち始めたのはつい最近だし、その前はただ名前だけ知っている程度だった。
まあ、どんなに仲が良かったとしても私の計画に厘毛の狂いもない。
ただ殺すだけ。いや、「検証」するだけ。同意は得てないけどそんなこと、どうでも良いよね?
「ねえ、あなたはどう思うの?」
何となく彼に聞いてみた。そう、本当に何となくだった。答えなくてもいい質問だった。
「まあ、悪くはないと思うぜ。」
彼は軽くそう答えた。本当かな? 正直、未だに彼のことは完全に信用できるわけではない。だから確認しておきたかった。けれど返って不安が増したような気がするのは私の気のせいかな?
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