吸い込んで、夏。
「何してんの?」
「散歩」
「へぇ。なんで?運動不足?」
「それもあるけど、暇すぎて」
「ふぅん。じゃあさ、あがってく?」
親指だけをたて、自分の後ろを指す千代田。……千代田の家に?
「いや、悪いよ」
「暑くね?」
「まあ暑いけど」
「かき氷やりてぇんだよ。でも、ひとりぶんだけやるのはなんとなく癪で。誰か来てほしかったんだよな」
「……行く」
まったく。わたしって単純なやつ。
「さんきゅ」
笑った千代田が、「そっち回ってきてよ。門から入れっから」と言う。
頷いて歩き始めると、千代田の生首は奥へと消えた。かき氷の準備だろうか。
暑い。耳に、髪をかけ直す。
門を開けてあがらせてもらい、さっき千代田がいた方向へと進んだ。