吸い込んで、夏。



「うちいま、おれしかいないから。気ぃつかうなよ」

「ん、ありがと」

「かき氷のシロップ、何がいいとかある?」

「……すきなのは、みぞれ。でもあんまり売ってない」



にやり。笑って、



「これなんだと思う?」



天に掲げた──みぞれ。



「わ、すごい」

「おれ、みぞれ一択なんだ。毎年頑張って探してる」



どこに売ってたか、毎年忘れちまうんだよな。ぼやいた千代田が、木製の縁側を指さした。



「座っていーよ」

「ありがと」

「ちょっと待ってな。クーラーボックスと、氷と、かき氷機と……」



つぶやきながら、千代田が家の中へと消える。



いまわたしが座っている、この縁側は。窓のサッシを越えてしまえば、千代田がいる空間と同じ場所に行ける、そんな位置。



窓は閉められていて、レースカーテンもかかっているから、家の中の様子は見えない。手伝いに行った方がいいのか、行かない方がいいのか。



──勝手に家に上がるのはないよな。待ってよう。


< 4 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop