吸い込んで、夏。
「うちいま、おれしかいないから。気ぃつかうなよ」
「ん、ありがと」
「かき氷のシロップ、何がいいとかある?」
「……すきなのは、みぞれ。でもあんまり売ってない」
にやり。笑って、
「これなんだと思う?」
天に掲げた──みぞれ。
「わ、すごい」
「おれ、みぞれ一択なんだ。毎年頑張って探してる」
どこに売ってたか、毎年忘れちまうんだよな。ぼやいた千代田が、木製の縁側を指さした。
「座っていーよ」
「ありがと」
「ちょっと待ってな。クーラーボックスと、氷と、かき氷機と……」
つぶやきながら、千代田が家の中へと消える。
いまわたしが座っている、この縁側は。窓のサッシを越えてしまえば、千代田がいる空間と同じ場所に行ける、そんな位置。
窓は閉められていて、レースカーテンもかかっているから、家の中の様子は見えない。手伝いに行った方がいいのか、行かない方がいいのか。
──勝手に家に上がるのはないよな。待ってよう。