吸い込んで、夏。



「おれもできた」



シロップをかけた千代田が、わたしと目を合わせ、いたずらっぽく微笑んだ。



「まさか上月とかき氷食う日が来るとは」

「ほんとだね、思ったこともなかった」

「はは。まあ、かき氷をふたりで食う想像、祭り以外じゃしないよな」



……それもそうだな。思いながら、差し出されたスプーンを受け取った。



いただきます。声を揃え、口に。



うん、やっぱり、わたしはみぞれがすき。



何かトッピング、だとか、わたしはいらない人間だ。千代田もそうらしい。



みぞれのシロップがあれば、それでしあわせ。



目の前が真っ白なこと以外、オールパーフェクトだ。



「……あつ」



千代田が口を開く。



かき氷を食べていても、まわりの温度が下がるわけではない。暑い。



「夏はすきなんだけどさ、さすがに今日は暑すぎる。地球温暖化にキレそう」

「地球温暖化防止のために、扇子買った。可愛いやつ」

「へぇ、いいね」



目を細めて笑った千代田が、

「今度見せてよ」

言った。


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