ひと夏の守護天使
「記憶はほぼ写し終わった。後は、人格となるお前を私に置き換えれば、嵐は、全能力を解放して、戦う事が出来る」

「どういうことだ」

「嵐は天級魔道強化兵だ。星を流れる天脈の力を直接扱える戦略兵器なのだ。その力を正しく制御するために、私がいる。このまま地脈変換が進み、天脈まで練気が進めば、その膨大なエネルギーは制御されずに解放されてしまうぞ。それでもいいのか」

「その知識はもう、僕にもあるぞ。お前が必要としているのは、嵐では無くて、とうに滅んだ北極大陸共同体だろう」

 憶えの無い知識が、溢れてくる。

 そこで気付く、もしかして、このままこいつと会話を続けている事で、僕はこいつと少しずつ入れ替わっているのではないかと。

「良く気付いたな。記憶と人格は密接に関連付けされているのだ。お前がその記憶を使えば使うほど、お前は私となって行く」

「出て行け、お前は僕じゃない。僕から出て行けっ!」

「もう、遅いよ。お前のいくつかはもう私だ。この流れはお前には止められない」

「くっ」

 麗輝は、ゆっくりとだが確実に人格侵食が進んでいるのを感じ始めた。

 自分ではどうしようもない。

 そして、麗輝は・・・

「ぐっ、何だ、人脈接続が・・・」

 急に、侵食が止まる。

「これは、この時代の人脈制御か?」

 徐々に声の存在が薄れて行く。

 それと同時に、麗輝の視覚に光が溢れてきた。

 声の存在が、完全に消えたと同時に、麗輝は、嵐に担がれた状態で、目を覚ました。
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