ひと夏の守護天使
「落ち着け、落ち着け、考えるんだ、麗輝」

 パニックに陥りそうな自分に言い聞かせ、端末の席に戻る。

 ウインドウに映る自分を見つめながら、麗輝はこれがどう言うことなのか考えた。

 回線が正常、システムも正常、島にも何も起こっていない。

 だが、実際には銃で武装した連中が侵入して、彼を撃ってきた。

 悪戯か?いいや違う。

 改めて端末の席に着き、ポインタでコマンドアイコンを開く。

 島内のモニターカメラの画像情報を一覧表示。

 その小さなウインドウ群の映像は、なんの問題もなかった。

 つまり、誰も映っていないし、さっき壁に開いた弾痕すら存在していなかった。

 これは入念に計画された襲撃だ。

 敵は、何らかの方法でシステムの感覚系を乗っ取り、ダイレクトラインをエコー処理で塞いだのだろう。

 この方法なら、完全にシステムを乗っ取るより簡単だ。

 ただし、かなり時間と機材と資金を投入しなければならない。

 それに、本社からアクセスしてきたら、すぐにばれる。

 なにしろ、ここには、麗輝がいるのだから。
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