ひと夏の守護天使
 彼が出なければすぐに異常と気付くだろう。

 それから、警備部隊が出動して、この島に来るのに2時間。

 高速VTOL輸送機による精鋭降下部隊だ。

 しかし、いつ気付いてくれるか、部隊が駆けつけるまでこの部屋で保っていられるかは絶望的と言っても良かった。

 そう、何もしないで待っているのなら……

 麗輝は、警備主任から冗談で教えてもらった、最悪の時に使うコードを端末に打ち込んだ。

 システムが掌紋と網膜チェックを要求してきた。

 手順に従い実行。

 クリア。

 警備モードが、通常警戒から索敵排除に手動切り替えされた。

 しかし、索敵ウインドウは、開いたまま何も表示しなかった。

 すでに敵は島内システムの感覚系を完全に掌握していた。

 麗輝がモードを手動で切り替えるのが5分ほど早ければ、有効だったはずだ。
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