【完結】私が恋した上司は、野獣系メガネ上司でした。
「……はい。好きです」
そう問いかけたその目は、あの時と同じ野獣の目をしていた。
篠崎さんは、メガネを外すと、野獣のような目になる。
「お待たせしました。カシスウーロンとハイボールです」
「ありがとうございます」
カシスウーロンを一口飲むと、甘酸っぱい香りと風味が口いっぱいに広がった。
「……おいしいです」
篠崎さんは、ただ黙ってハイボールを飲んでいた。
「……太田は、何でうちの会社に入ろうと思ったんだ?」
「ずっと憧れだったからです。丸松食品の冷凍食品とか、スイーツとかお菓子とか、本当に大好きだったんです。……だから、そういうものを作れる会社に入りたいなって思って」
「……ふーん」
「篠崎さんはどうして、丸松食品に?」
「……うーん、なんでだっけな。忘れた」
「そうですか」
「よし、1杯だけ飲んだし帰ろう」
「はい」
なに?本当に1杯だけで、帰るんだ……。