【完結】私が恋した上司は、野獣系メガネ上司でした。
「……あれ、お前って左利きなんだ?」
「えっ?」
「いや、だって、書くとき右で書いてるから」
「ああ、私お箸持つときは左なんです」
「へぇ。器用なんだな」
「いえ、そんなことありません」
そういえば、こんな会話、今までしたことなかった。
なんだか、不思議な感じ。
「……お前、アイツと仲いいの?」
「へっ?」
「同期。広沢だっけ?」
「ああ、まぁ仲いいというか……。同期なんで、話はしやすいです」
「……ふーん」
なんだか篠崎さんの視線が、広沢くんに向いている気がした。
この時の私は、まさかこの二人がライバルになるとは、思っていなかった。
「ごちそうさまでした」
「俺、ちょっと事務室行くから先戻ってて」
「分かりました」
私は歯磨きをしてから、先に営業企画部へと戻った。
まだ篠崎さんは、戻っていなかった。
「文ちゃん、篠崎くんけっこう厳しいでしょ?」