死にたがり屋の少女は暴走族と・・・
「家が…ない?」


「…うん。もう、あの家は無いんだ。家もない、お父さんや、お母さんも居ない。私には…もう、詩雨しかいないの。」


「未雨…」


そんな顔…しないで?


私にはまだあなたが居るんだから。


「でも俺は…未雨とは帰れない。それと…未雨はここに居るべきじゃ無い。」


「わかってくれ…」


詩雨…。


それは


「それは、こっちのセリフだよ?」


「詩雨こそ、こんなところに居るべきじゃないよ?」


詩雨はまだ手を汚していない。霖也はそう言っていた。


詩雨は族には所属しているけど、族潰しをしていない。


私こそ…詩雨といたらダメなのはわかってるけど…。


もう、離れたくない。


だから…


だからせめて、


「一緒に逃げよ?」


そう。私はこの道から離れて2人で隠れて暮らす道を選ぶ。


綺麗な道でも…汚い道でもない。


ただ隠れてひっそりと暮らす。


「詩雨…」


と話しているときだった。


「未雨!!」


「未雨!!ったく…アイツどこ行ったんだよ。」


霖也や、霖也の部下達が私の名前を呼んでいた。


多分…私を探しているのだろう。


今、2人でいるのがバレたら…


と思い、詩雨を見ると


「お前は行け。」


詩雨…。


「また…また会いに来るから!!」


私はそう伝えると仕方なく声のする方へ向かって走る。


詩雨…待ってて。


そう思いながら霖也の元へ行く未雨を詩雨が切ない目で見ていることは知らない。
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