愛は惜しみなく与う⑦
ニコニコ笑いながら話すサトルをみて、悲しくなった。
すべて遅かった
何も間に合ってない
「お姉ちゃん!」
切羽詰まった鈴の声がした。
後ろを振り返れば、志木が床に倒れ込んでいる。
「志木が!!息してない!!」
え?
ぐったりと倒れている志木
サトルを放置してすぐ駆け寄り、体に触れる。
脈は?
血の気がひく
確認する手が震える
「志木の名前、呼び続けて」
こんなに手が震えることがあるのか。あたしはバカや。守らなあかん人は近くにいたのに。ごめんな志木
「お願い、目を覚まして」
覚えてるよな
人工呼吸、胸骨圧迫
震える手に力を入れる
「志木!志木!」
鈴が名前を呼ぶ
志木の顎に手を添えて気道を確保する。大丈夫。できる。あたしならできる
必ず助ける
AEDとかないよな?廃墟には…
手に力を入れて胸の圧迫を行う。
昔一度、したことがある
志木のお父さんに
「お願いお願いお願い!!」
志木がおらんとか考えられへんから。あたしの未来には志木が居るから。
居なきゃ…あたし…