愛は惜しみなく与う⑦
でもそうはさせまいと、俺の腕を杏は掴んだまま


「しんどかった?苦しかった?」


「……苦しかったさ。じゃなきゃこんな事してない。全部壊したかった。ぐちゃぐちゃにして、元に戻らないくらいまで壊して……」


そのまま黙り込む。言葉に詰まってしまった


杏は、俺の次の言葉をただ静かに待つ



2人の後ろでは、いまだに煙がモクモクと上がっている。
でも2人の空気は何者も邪魔できない、そんな空気が流れている気がする。



「俺は、お前を壊してどうしたかったんだろうな」



ふっと鼻で笑ってしまった。さっきから変わらぬ表情で見つめてくる杏は、頭の中を必死に整理しているだろうな。

結局何がしたかったか分からないなんて言われたら、なんでここまで傷つけられたのかと問いたくなるだろう。


俺でもそう思う。



「多分……見て欲しかった」

「ん?」


「お前の視界に入りたかった。自分を知って欲しかったんだろうな?そんな気がする。」


「ものすごく自分勝手よな」


思ったことをそのまま語る杏は、やれやれと言った表情に変わる。
自分勝手、か
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