愛は惜しみなく与う⑦
そして進むに連れてドンドン嫌な予感がしてきた。言いようのない不安がドッと押し寄せてくる感じ。


「どうか無事で居てくれ」


願うことしかできない自分の不甲斐なさ。
結局俺は、何もしてあげれなかった。


ポツポツ

雨が……降ってきた


この時期の朝の雨は冷たい



そして雨が強くなってきた時、人の姿が見えた。


遠くからでも誰だかわかった。



「…サトル」


きっと聞こえていない。雨にかき消された。
サトルは盛り上がった瓦礫を掻き分けている。何をしてるんだ。

そう思った時心臓がはねた


もしかして


杏!?!?



「杏!!!!」


瓦礫の山は、2階の屋根が落ちてきたのか、上を見れば、もぎ取られたかのように欠けている部分があった。


俺の声でサトルは振り返りこっちにくる


こいつ……


泣いてる?



「杏がいない。死んだかもしれない」



こいつは、なんて言った?

杏が死んだ?



「嘘でも、杏が死んだなんて言うな!!!」


水瀬の胸ぐらを掴み上げる
でもそんな俺にも反応せず、涙を流している。
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