愛は惜しみなく与う⑦
状況が読めない

周りを再び見れば、二階と同じ高さくらいに、飛び移れそうな崖がある。

この崖……
この敷地の入り口につながってそうだな


てことは、杏は…
予想だけど屋上に出てから、ここに飛び移り、あの崖を目指した。

気がする


サトルはボーっと1点を見つめている。


さっき見たけどサトルの手は血も出てボロボロだった。
きっとこの瓦礫をどけて杏を探したんだろう。


大丈夫


絶対見つけるから


「蕪木!!!」


その時頭上から声がする。上を見れば、さっき見ていた崖の上に水瀬が居た。


「そこの屋根が崩れて落ちたんだよ!落ちた瞬間は見えたけど、そのあと瓦礫も降ってきて、姿が見えないんだ」


水瀬は……水瀬には俺や杏の言葉が届いたんだな。


「今、お前のチームの参謀に連絡をして出来るだけ近くまで救急車を入れてもらうように頼んだ。だから……見つけてくれ」


すごいよな
あんな嫌な奴だったのに。杏は変えてしまうんだもんな。


「ありがとう。サトルだけ…自殺しないように見ておいてくれ」
< 179 / 404 >

この作品をシェア

pagetop