愛は惜しみなく与う⑦
「どこいくんだ?」


水瀬は斜面を見つけて下に降りてきた。


「穴があった。杏は賢いから…きっと中に逃れたと思う」

「お前、中に入るつもりか?」

「あぁ。時間がない。崩れるかもしれない」


サトルに居なくなられても困るから、水瀬には念を押す。


「……お前らが死んだら意味ないんだからな」

「分かってる」


今の水瀬は味方だ。
もうこんな時に、裏切られるかもなんて発想にもならない。

使えるなら使う。


入れそうな入口なのか崩れた跡なのか分からない隙間から、建物の中に入る。


外ではまだ煙も上がり轟々と音が鳴っていたが、建物の中は、怖いくらい静か


時折、どこか崩れたのか、音が響く



地図を見てさっきの瓦礫の裏側に急ぐ


絶対いる

確信したそのとき、遠くに小さな身体が横たわるのが見えた
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