愛は惜しみなく与う⑦
「…ずみ?」
「!!!!杏」
ピクリと握っていた手が動き、杏の声がした。
この声は消えてしまいそうなくらい小さい
「杏!俺がわかるか?もうすぐ病院に連れてってやれるから。あと少し…頑張ってくれ」
もう頑張らなくていいよって思ってたのに。頑張らせなきゃいけない。
「あ、たま痛い」
「うん。そうだな。血が出てるから動かないで」
「……泣いてるん?」
薄っすらと目を開けて、杏は俺の顔に優しく触れた
「不安に…させたな。ごめんな…泣かんといて」
杏の手に自分の手を重ねて力を入れる。
俺の力を全部あげるから。出来るなら、その傷を全部俺が引き受けるから。
「お願いだから…生きて」
なんでもするから。
俺たちから…杏を奪わないでくれ
でも現実は残酷だった。
「はな…し…きけ、へん…か、も」
「あ、ん?」
俺の頬にあった杏の手から力がなくなり、俺の手をすり抜けるようにして
杏の手は地面に滑り落ちた
「杏?なぁ、返事して?」
さっきまで何かしら反応のあった杏は、ピクリとも動かなくなってしまった。
外がざわざわする