愛は惜しみなく与う⑦
そして少しして、コンコンと部屋の扉が鳴る

誰だろう

そう思って見たら、扉から現れたのは、杏の妹だった



「す、ずちゃん」


敦子は妹に駆け寄る
俺たちが外に出てからの、中でのことを聞くにも、泉も志木さんも杏もいないから…詳しくは分からなかったけど、泉が妹を外に連れ出したところを見て、杏と妹はちゃんと話せたんだと思う。



「皆さん、ご迷惑おかけしました。怪我をした方も…本当に…ごめんなさい」


あの廃墟で見た時と同じ格好のままの妹は、深々と頭を下げた。


謝られても…

俺たちに謝られても意味ない



「家は…どうなってるの?」

「帰れません……でも全て真実を話そうと思います。お姉ちゃんが私のフリをしてくれていたこと。この半年間私は…サトルと…如月冬馬さんと一緒に居たことを」



涙を流しながら語る妹


東堂財閥はどうなってしまうんだろう。



「それじゃあ、杏が守った意味がない」



言葉にするつもりはなかったのに、口から出てしまった。杏の癖が移ったかな。


みんなが俺を見る
そんな注目されても、大したことは話せねぇけど…
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