愛は惜しみなく与う⑦
「なんだよ。杏がなんだ?本当に杏がそんな事すると思ったのかって聞いてんだよ」
「ちょっと、あんた。この子をここで責めても意味ないでしょ?」
志木さんはもう一度念入りに水で洗い流して、目を冷やしている。
戦闘態勢って事だな
責める泉をなだめる美奈子
それをハラハラした顔で見てる俺たち
「お前が生きてるって聞いた時、杏はどう言ったと思う?お前とサトルが手を組んで、杏を騙していた事を知った時、杏は『辛い思いさせたから謝りたい』って言ったんだぞ?
一度もお前を責めてない。杏はただ……お前が生きていて嬉しかったんだと思うよ」
まだ目が思うように開かないのか、目を押さえたままの泉は、今度こそ止めても無駄だと分かった。
扉に手をかける
「まだサトルの味方なのか、どういうつもりでここへ来たのか知らねーけど。
杏を傷つけるなら、妹だろうが容赦しねーからな」
あぁ、泉が行ってしまう
俺たちは本当にどうするべきなのか。追っても、何もできない。そんなことは分かってる。
でも
「俺たちもいくぞ。最後まで、杏のそばにいて、あいつの頑張りを見届けるぞ」
気づいたらそう言っていた