愛は惜しみなく与う⑦
「さっき妹に言った事は本当か?」
「…はい。本当です」
昴さんは落ち着きのない敦子と美奈子を制して泉の前に立つ。
「頭を強く打っていて出血も酷かった。手術は今してて、やれる事は…してくれてる。今夜を乗り越えれれば、生存率は上がるって言われてる」
「生存率が上がるって言い方、気に食わないな。死ぬ確率の方が高いって意味で、医者はそうゆうたんか?」
死ぬだなんて
考えてもみなかった
考えるわけないじゃん
そんなの…嘘でも頭に浮かんだ事はない
「とりあえず医者が言うには、本人の気力が大きく関わるって言うから。色々片付けたら、夜にみんなで病院に行こう。きっと杏に俺たちの声は届くから」
俺たちは祈るだけだ
その後、杏をどんな状態で見つけたかを泉が教えてくれた。
俺たちが外に避難してからの中でのこと。泉が志木さんと妹を連れて先に出てきた理由も。
そしてその後のことは、水瀬に聞いたと言って、どうして怪我したのかを聞いた。
どうにもならないと分かっていても、悔しさが込み上げてくる。