愛は惜しみなく与う⑦
志木さんは体を動かしたのか、電話越しに痛そうな声を出した。


でも本当に


生きててよかった



『皆様はどうですか?大丈夫ですか?』

「動揺はしてますけど…杏の無事だけを祈ってる。それしかできないからって言ってた」

『それで充分ですよね。皆様があれば杏様は喜びますので』


不安な気持ちは隠せないほどに大きくなっていく。それは俺もだ。
俺が不安な顔をすれば、みんなが不安になるのも分かってる。

だからそうならないようにしてるけど…

きついよな


その時、妹がいる部屋の扉が大きな音を出して開いて、中から母親が飛び出て来た。



『泉?どうかしましたか?』

「あー…いや、杏の母親が暴れてる」

『…私戻りましょうか。私の話なら、まだ聞くと思うんですが』

「志木さんは杏のそばにいてあげて下さい。俺が…少し話してみます」

『あの…ある意味常識の通用しない人なんで…気をつけて下さいね』

「わかってる。落ち着いたらまた電話しますね」


志木さんとの電話を切れば、母親の視線が俺に向けられていることに気づいた。

なんともまぁ…怖い顔をしている
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