愛は惜しみなく与う⑦
「そうね…杏ちゃんは何処にいるんだい?杏ちゃんが直接話すしかなさそうだけどね」


そう言われてドキッとした。
杏が重症だなんて、言っていないから。

でもみのりさんに隠すのもおかしいから説明すれば、顔がどんどん青ざめて、くらりと倒れそうになるのを支える。


「なんてこと…杏ちゃん…」

「守れなくてすみません。守るって約束したのに。とりあえず…俺達は世間的には無かったことにしたいんです。杏の意志だから。妹のために杏が守った場所だから。

でも…せめて母親には知ってほしいっていう、俺たちのエゴで動いています」


泣かせてしまった。
だからこそ、誠実に、みのりさんにも向き合わないといけない。

杏を娘のように育ててくれた人だから


「母親と話せれば、ケジメが付けられると思ったんだ。杏は望まないかもしれないけど、新しくスタートを切るには必要だと思うんだ。でも、話せないなら諦める。杏が目覚めれば、関東に連れて帰る」


「そんな…お姉ちゃんには会えないの?」


「中途半端に東堂に関わるよりいいだろ。杏を…解放してやりたいんだ」
< 229 / 404 >

この作品をシェア

pagetop