愛は惜しみなく与う⑦
その子を見つめていたら、知らない間に消えていた。

また

居なくなった


あたしの前から人は居なくなる


いや、違うか


あたしが、みんなの前からおらんくなりそーなんかな。

ザワザワとした心がどんどんあたしを不安にさせる。


もう、帰りたい



…帰りたいってどこに?


あたしには帰る家もないのに


あれ、なんで家がないって思ったんやろ。


自分の頭やのに理解がおいつかない


『杏』

「ぎゃぁあああ!!」


突然背後からした声に驚いて、我ながら汚い声が出た。
振り返ればイカツイおじさんがいて、泡吹きそうになったわ。

あれ

そういえばさっきから出てくる人


みんなガラ悪いな

この人は特に


そう思ったけど、優しい人やと瞬時にわかった。なんでかは知らんけどな。



『お前が大きくなって、沢山の人に愛されて、俺は嬉しいよ。自慢の娘だよ』



娘?

この人は、あたしのお父さん?


顔似てないけど


あれ、なんであたし、自分の顔がわかるんやろ


『お前の孫を見るのが俺の夢だ。老後の楽しみ、俺から奪うんじゃねーよ』
 
< 236 / 404 >

この作品をシェア

pagetop