愛は惜しみなく与う⑦
最初は東堂から逃げるために生きた
サトルに復讐するために生きた
鈴の仇を取るために生きた
それが終わったらさ
あたしは誰なん?
東堂にも戻れへん。東堂杏でもない。
じゃあ峰岸を名乗るん?
でもそれは、東堂の娘で、母上の旧姓を名乗らせてもらってるだけ。
身分証は東堂杏や
それにあたしは、高校2年生じゃない。復讐のために、自分の自由に動ける時間のために17歳として高校に入った。
けどホンマは違う
本来なら働くか大学に行く年齢で。
すべてが偽りや
あたしの人生は偽りばっかり
ここから人生の修正の仕方が分からへん。
崩れていくのは簡単で、笑えるくらい見てきた。目の前で崩れていって、どうしようも無くなるのは見てきた。
やからあたしは、立て直し方が分からん。
ここまで崩れて歪んでしまった自分の人生の、戻し方が分からん。
志木は、偽りなく向き合おうと言った。
「偽らなかったら、あたしは誰なん?」
どこにいるのが正しいのか
『杏様は、杏様です』