愛は惜しみなく与う⑦
「どこの誰よ。東堂の娘か?ちゃうやろ。みんなあたしは居なくなったと思ってる。東堂と名乗ってさえいない。それこそ偽りや。
峰岸杏は、仮の名前。都合よく生きるためにそう名乗ってただけ。関東に行ってもそう。偽ってできた場所や。
簡単なことやと思うねん。
開き直ってさ?全て終わったから、好きなことするわ!でいいと思うねん。
でもそれが出来るなら、あたしは半年前、鈴になる事を決意してない。開き直れるなら、東堂を守ろうと思ってない。
あたしは……」
そうか
自分で喋っててわかったわ
あたしは、どの場所も好きなんや
いい思い出がないと思ってた東堂も、大好きな志木や雄作さんとの思い出がいっぱい詰まってる。
自分を成長させてくれた場所。
嫌な思い出を上回る、幸せな思い出がいっぱいある。
偽ったまま、自由になりたくて、自分の居場所を自分で作ってみたくて…
そんな時に出会った昴や敦子や美奈子。
薔薇もあたしの大好きな場所で、今のあたしがいるのは薔薇のおかげ。