愛は惜しみなく与う⑦
車椅子に乗っている志木がいた

重症やん


「歩くのが面倒なだけです。貴方の方が酷い怪我だったんですからね」


医者を呼びます

志木はそう言ってナースコールに向かって話しだす。


おかしいな


「あたしと話してなかった?」

「え?」

「なんかついさっきまで、志木とずっと話してた気がする」


なんやろ
夢かな

覚えてないねんけどさ

なんか広大な場所で…志木と話してる夢やった気がするな。


あれは、やっぱり夢か


「杏様の夢に出演できて光栄です」


車椅子をクルリとこちらに向けて志木はあたしの顔を覗き込み言った。

よく周りを見れば、病院らしい。

あたしはベッドに繋がれて、あらゆる管が自分の体に繋がっているのを確認した。


そしてこの頭の痛さ


頭割れて脳味噌ちょっと出たやろってくらいの痛み。


とりあえず


皆んなの視線の方が痛いかな。ふふ




「おかえりなさい」



うん

身体は痛いけど


気分は悪くないな



「ただいま」



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