愛は惜しみなく与う⑦
「あの後、お前があのバルコニーから飛び降りた後、聞いたんだ。如月家の人に。さっきまであの席に座ってた女は誰だって。そしたら東堂家の長女だって言われた。
あぁ、このままこのぬるま湯みたいな吐き気のする環境で数年耐えれば、あの女と結婚できるのかって思ったんだ。
でも違った。
東堂家の後継で俺の婚約者は、妹だと聞かされた。絶望だったよ。
初めて、嫌だ、こんなはずじゃないって思ったよ」
興味本位で鈴に会ってみれば、あたしと全然違ったと…サトルは悔しそうに語った
「感情がないから有難いことに、誰かじゃなければ、という事が一度もなかった。あの時までは…なかったんだ」
何も感じずに済む
そう自嘲的に笑った
「この人じゃなきゃ嫌だ、お前じゃなきゃ嫌だって……感情がでてきたんだ」