愛は惜しみなく与う⑦
サトルの言わんとすることは分かる。

この人は好きで、この人は嫌い
そんな感情ばっかりやから。

普通に生きていく中で、こんな人と友達になりたい。こんな人は嫌。こんな人は尊敬できる。たくさんある。

そういう感情は、時として邪魔になる


でも


そういう気持ちがあるから、人間なんやで。



「今まで何も欲しいと思ったことはなかった。離れていくものばかりだから。自分から欲したのはお前だけなんだ」

「あんたは勘違いしてる。あの時たしかにあたしは、あの会場で異様な空気を纏うあんたを、外に連れ出した。見つけ出してくれたって思ったんやろ?でも、外であの後再会した時は気付かへんかった。見つけれてないよ。
あたしにこだわる理由が全然ない。それこそさっき言った、あたしじゃなきゃダメな理由がない。

見つけてくれたことが嬉しいなら、外で会った時、気づきもせんかったあたしは、あんたの求める人じゃないやろ?


ましてや…あたしは大事な人を傷つけたあんたを、この先許すつもりもない」



サトルの言葉は時々揺れそうになる
子供と話しているような感覚にも陥る。
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