愛は惜しみなく与う⑦
てゆうかまだ、お付き合いもしてないでしょう!!!


「杏が動揺してたの?」


そんな私を無視して泉は敦子に声をかける。動揺してましたよ。あれは確実に。


「うん。なんか、いつも恋愛とかでからかっても、杏ちゃんって伝わらへんと言うか鈍いから、ん?って顔しかせんねんけどさ?
なんか、めちゃテンパってたな」


あれなんやろ。泉くん、なんか知ってる?

敦子は首を傾げて泉をみる。



「いや、知らない。動揺した杏みたかったな」


ふっと笑って、迷惑にならないところ戻るぞ。と言い、歩いて行った。

泉の顔からして、心当たりはなさそう。


じゃあどうして杏様は動揺してたのか。



ただ頭を打って、おかしくなっていただけなのか。よく分からないままになってしまった。


でも


どうしてあんなに動揺したのか



杏様自身がよく分かっていた


私たちが出て行った病室で、杏様は赤くなる顔を両手で覆う




『あのとき、全部聞こえてたねん』




杏様の言葉は、静かな病室に小さく響いた


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