愛は惜しみなく与う⑦

「てめぇ、殺すぞ」





サトルの力が緩んだ


「離れろ」


その声と共に、サトルは突き飛ばされて、後ろに転がった


「ゲホゲホッ!…ッ!」


死んだかと思った!!


「杏!しっかりして!」


あたしが倒れ込まないように、背中に手を添えて顔を覗き込んできたのは、泉やった

アホやな



「なんちゅー顔してんの」


泉の目が真っ赤
目を開けてることさえしんどいやろうに。

来てくれたんか


「喋るな」


泉の顔が肩に埋まる
泣いてるの?
手が震えてるよ


「ごめん、痛い思いさせてごめん」


泉の顔に手をのばして、目の近くに手を置く

赤くなって
目の端から涙が出ている

ごめんな


泉の顔に触れるあたしの手に、泉は自分の手を重ねてギュッと握ってくれた。

あぁ、怖かった
あのまま二度と酸素を吸えないかと思った。


「杏様!?!?」


足音が聞こえて物凄いスピードで志木が近づいてきた。

あぁ、志木がいる安心感すごいな

慌ただしく部屋から追い出してしまったからさ。ほんま帰ったらあたしを置いて行ったこと、説教したるからな?
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