愛は惜しみなく与う⑦
杏の人生だから
俺たちは何も言えなかった
「みんな大好きやで」
今まで見たこともないくらい、キラキラとした笑顔を見せてくれた。
俺たちは程なくして、杏を関西に残して関東に戻る。
帰らなきゃいけない
杏にも帰ってくれと言われたから。
正直、新が話さなきゃ、俺や朔辺りが、考えずに杏に感情をぶつけてしまっていたかもしれない。
新のおかげで落ち着くことができた。
杏……
世話になった雄作さんや、みのりさん。東堂組の人達にも声をかけて帰り支度をする。昴さん達も来てくれた。
「杏を頼みました」
志木さんともお別れだ。
「泉に会えて本当に良かった。また必ず、会いましょう」
少しだけだ
少しの間我慢すれば会えるから
杏はこれから苦しいリハビリが待ってる。前のように動けることは、まずないと言われてるらしい。
それでもいつもの笑顔を見せてくれるなら、俺にできることは何でもしたいと思う。
どれくらい杏と離れなきゃいけないんだろう。
このままここにいたいと思ってしまう。
本当に杏は、帰ってきてくれるのだろうか
待っててとは、いつまでか